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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(し)17号 決定 1953年1月22日

主文

本件申立を棄却する。

理由

一件記録によると昭和二五年一月二七日被告人荒巻正一郎に対する東京地方裁判所私文書偽造行使詐欺事件の第二回公判において、弁護人が提出した公訴棄却を上申する旨の上申書の取調を求めたのに対し、裁判官一松弘は右「上申書は不必要と認めこれを却下する旨決定を言渡した」との記載が公判調書に存することは明らかである。しかし右趣旨はただ上申にかかる事項の調査判断を差当ってはしない旨を表明したにとどまり、本件公訴を有効なりと判断し公訴棄却の申立を却下する旨の決定をなしたものではない。(本件の場合において公訴を棄却するか否かは最終の判決自体において判断すれば足りる事柄である。)然らば右申立人の不服を申し立てる原決定は存在しないのであって、これについての特別抗告は不適法である。

よって刑訴四三四条、四二六条一項に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

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